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R.I.P Michiaki Ishida

michiaki ishida
先日、自分のサーフィンに多大なる影響を与えてくれた先輩”石田道朗”さんが亡くなりました。その人が居なければ今の日本の、もしかしたら世界的にもサーフィンはこんな風になっていなかったと断言できるほどとてつもないことをしてくれた方なのですが、今日はその石田さんとの思い出とサーフィン界に与えた功績について書きたいと思います。もっと関係の深い人も多いでしょうから、自分なんかが書くべきではないのかもしれませんが、石田さんへの感謝を込めて自分の知っている範囲でなるべく正確に書き綴りたいと思います。
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photo:Akira Kobayashi

 

石田さんと初めてお会いしたのは約20年前の1998年ころでした。自分はそのころ宇都宮のオッシュマンズで働いていたので、サーフィンはもっぱら北茨城方面に行っていました。当時のオッシュマンズのバイヤーTさんが石田さんを連れて北茨城に来てくれたのでそこで一緒に波乗りしたのが初めでした。当時石田さんはHPD Donald Takayamaの日本の総代理店をやっていたので、仕事的にはそれ以前から取引はあったのですが、本人に会うのはそこが初めてでした。バイヤーTさんはその少し前まではバリバリのショートボーダーで全日本に出るほどの方だったのですが、石田さんに出会ってロングボードに乗り始め、ロングボードとか8フィートくらいのミニロングみたいなボードだけを積んで茨城にきていたことだけでも自分にはカルチャーショックでした。時代はニュースクール全盛期でテイラー・スティール作品なら”THE SHOW”の時代でしたからw(もちろんVHS!)

石田さんはその時初めて見るロゴのウェットスーツを着ていました。それがファーストサンプルのAMSTERDAMの黒いラバーのウェットでした。初めてみるAMSTERDAMのウェットは衝撃的にかっこよかったのを覚えています。あとサンバイザーをしたまま波乗りするのも。

<功績その1、HPD Donald Takayama×Joel Tudor>
90年代にロングボードが復活した最大のポイントであるドナルド・タカヤマとジョエル・チューダーの人気が不動のものとなったのは石田さんたちがHPDの販売を手がけるようになったころかと思います。HPDの販売としてはそれ以前にもありましたが、そのころから明確に時代が動いてきたのでは無いかと思うのは、自分もサーフショップのスタッフとしてHPDを販売していたので、ひよっこの自分にもそう感じたことを覚えています。その後の日本でのロングボード人気はこの辺の時期がベースになっているので、そのきっかけの大きなところを作ったのが石田さんだったといえると思います。

 

<功績その2、The Seedling>
the seedling dvd brine ブライン サーフショップ
そして最大のポイントはこの20年来では最もインパクトのあったサーフムービーともいえる”The Seedling”の制作です。これは言わずと知れたトーマス・キャンベルの名作ですが、石田さんはCO-PRODUCER(共同制作者)としてこの映画の制作に関わっています。関わっているというよりも、ジョエル・チューダーと石田さんがトーマス・キャンベルにロングボードサーフィンの映像を撮らせたら面白いのではないかというところから話が始まったそうです。そのきっかけになったのはトーマスがSUPREMEの為に作った”A LOVE SUPREME”だったとのことです。ジョン・コルトレーンのLOVE SUPREMEをBGMにニューヨークのストリートスケートボードを16mmのフィルムで撮影した作品です。話はまた脱線しますが、カッコいいので時間のある時に観てください。

A LOVE SUPREME from MoFo!Vision on Vimeo.

トーマス・キャンベルが2009年に3作目のサーフムービー”THE PRESENT”のプロモーションで来日している時、パタゴニアサーフ東京で試写会をやったのですが、その時の舞台挨拶で「まず初めに、スケートボードの世界で主に撮影していた自分がサーフィンの映像を撮り始めたのはMichiakiのおかげだから、そのことを感謝したい」、そして会場の一番後ろに立っていた石田さんに向かってお礼を言い、「みんな拍手!」みたいな感じになり歓声と共に石田さんに会場の皆が拍手したりしたこともありました。この時点ではかなりの巨匠になっていたトーマス・キャンベルが石田さんへ最大のリスペクトを持っていることに本当に痺れましたが、それほどの人だってことです。
the seedling thomas campbell ブライン サーフショップ
この”The Seedling”という作品がその後のサーフィンシーンに与えたインパクトは計り知れません。2000年前後でショートボードはもちろん、ロングボードの世界でもトライフィン&コンペティションサーフィンを頂点に展開されていた時代にいきなりこの世界を伝えてくれたのです。シングルフィンロングボードのみ、ジョエル他数名以外は出てくるサーファーもコンペティションでは無名のローカルだったり、若き日のカシア・ミーダー、デーン・ピーターソン、中村清太郎だったり、音楽もトミー・ゲレロ、レイ・バービー、tortoiseだったりと全てが他のサーフムービーと違っていました。
現在メディアなどによく出ているスタイリッシュなサーファーの多くが若い時からこの作品を何度も観て、影響されてきたというのは良く聞く話です。みんなシードリングチルドレン、ジョエル・チューダーチルドレンなんです。僕なんかは石田チルドレンともいえますw
このようにジョエル・チューダーがけん引したカリフォルニアのサーフシーンを時差なしで日本に伝えたのは他ならぬ石田さんなのです。
seedling california

 

<功績その3、SURFBOARDS BY JOEL TUDOR>
その後しばらくして、ジョエル・チューダーがHPDから離れ、自身のサーフボードブランド”SURFBOARDS BY JOEL TUDOR”をスタートします。もちろんこれも石田さんとジョエルのやったことで、PAPA JOE、DIAMOND-Tといったシングルフィンロングボードの傑作から、何よりその後のサーフィン界に衝撃を与えたのはシングルフィンショートボード”GOOD KARMA(グッドカルマ)”のリリースでした。67年からはじまったショートボードレボリューション、その過渡期に出ては消えていった様々なデザインのサーフボードを再評価し、実際のビンテージボードを実際にテストしシングルフィンのショートボード、ミッドレングスを次々と開発していったのがこのブランドです。現在ではすっかり市民権を得たようなオルタナティブ系とかいわれることの多いこの辺のサーフボードですが、それが復興したのはまさにこのタイミングでジョエルと石田さんが仕掛けたことがきっかけとなりました。まさにオルタネイティブ(もう一つの、代わりとなる)サーフィンスタイルを提案してくれたのです。

更に今や人気の高いFISHですが、日本での流行のきっかけになったのもやはりジョエルからでした。映画のFISHではその辺は触れられておらず、一般的にはトム・カレンがJ-BAYでスキップ・フライのFISHに乗ったのがきっかけとされることが多いようですが、そのタイミングでは大した話題にはなっていませんでした。自分が勤務していたオッシュマンズにもそのタイミングで「トム・カレンがJ-BAYで乗っていたやつ」ということでスキップ・フライのFISHが入荷しましたが、しばらく売れ残っていました。160000円だったのに!
FISHが注目されるようになったのはジョエルがグッドカルマの後にTWIN FINのモデルを発売し、これまた伝説的なサーフムービー”NATURAL EXPRESSIONS”でツインフィンのライディングを見せてくれてから人気が爆発しました。自分はその真っ只中に居ましたので、そう確信しています。ということはFISHの流行もやはりジョエルと石田さんなのです。その当時、自分は「ジョエルと石田さんを中心に世界が回っている!」と本気で思っていました。ジョエルと石田さんが話していたように世の中が変わっていくようでした。(自分の場合は前出のバイヤーTさんを通して聞いていた内容がほとんどでしたが。)マクドナルドの1ドルのコーヒーではなく、スターバックスの3.5ドルのコーヒーに価値観を見出したり、ディーゼルのプレミアムデニム(当時ジョエルがスポンサーされてた)が売れるようになったりするのと同様に、クリアやエアブラシではなくレジンカラー&ポリッシュ仕上げのボードが高くても売れるようになると言っていたのも本当にその通りになったとか。

自分もショートボード一辺倒でしたが、シングルフィンのPAPA JOE、GOOD KARMA、DAVID NUUHIWA、JT TWINと手に入れどっぷりとこの世界に浸かって、その後のサーフィン人生が変わりました。本当に最高に幸せなサーフィン人生を提案してもらって感謝です。

 

<功績その4、BLACK WETSUITS >
同じ時期にAMSTERDAM WETSUITSが本格始動しました。そのころの日本のウェットスーツはカラーを入れるのが当たり前で、いかに人と違う組み合わせでカッコいいカラーをオーダーするか、みたいなノリでした。その中で黒ラバーのAMSTERDAMのデビューはクールでした。
昔のウェットスーツをモチーフに斜めのラインを使ったカッティングデザインは真っ黒なのにとてもカッコよく、機能よりもデザイン性を重視みたいな姿勢も斬新でした(今でも!)。ウェットスーツは真っ黒でサーフボードはティントやピグメントカラーでというスタイルを我々に示してくれました。それは今や当たり前になっていますが、この辺のことがきっかけになっているのです。タッパー&ロングジョンのスタイルもAMSTERDAMが人気を定着させました。ジョエルのアイディアを日本で石田さんが製品に仕上げたのです。歴代のライダーもジョエルをはじめ、ジョージ・グリノウ、トーマス・キャンベル、バリー・マッギー、クリスチャン・ワック、アレックス・ノストなどなどそうそうたるメンツです。ロブ・マチャドもたまに着てましたね。

amsterdam wetsuits seed brine ブライン サーフショップ

 

<功績その5、SURF ART>
アンディ・デイビスのFREEを日本に紹介したのも石田さんです。今やアーティストとしても巨匠となったアンディもやはりはじめは石田さんです。ジョエルとアンディのアートショー”JOINT AFFAIR”を渋谷でやったりとアートイベントも超絶かっこよかったです。サーフアートなんて言葉も今は使われますが、サーフィンとアートをはじめに融合して紹介したのもこのころの石田さんだったと思います。
このブログで何度か紹介しているフォトグラファー、”WET DREAM”の制作者 竹井達男くんと自分の出会いも石田さんによるところでした。

 

<功績その6、CALIFORNIA>
その名もずばりCALIFORNIAというサーフショップです。ここは石田さんの店だから常にカリフォルニアの最新の情報にあふれている店です。サーフボードはもちろんですが、雰囲気も他のサーフショップとは全く違う店で、初めて入った時に感動したほどです。ある意味ではカリフォルニアよりもカリフォルニアなのかもしれませんw。以前、クリステンソンが来日して鎌倉で波乗りしたあと(藤沢の)カリフォルニアに行きたいとのことなので、連れていったのですが、クリスも感動していました。多くの横乗り界の重要人物、アーティストもここへ訪れ、壁に落書きしていくというのが定番になっています。この壁が物語っています。
カリフォルニア CALIFORNIA SURFSHOP
カリフォルニアのカッコいいサーフィンスタイル、アイテムを販売するだけでなく、店内でのライブなどのイベントも話題になりました。はじめは身内の音楽好きな人たちがやっていたような感じでしたが、回を重ねるにつれ、国内外の有名なミュージシャンのライブも頻繁に行われました。よく出演していたCARAVAN、KEISON、MAGNOLIAなどのライブがその後のサーフロックトリップ~グリーンルームフェスティバルに繋がったともいえると思います。トミー・ゲレロ、レイ・バービー、マットソン2なんかのライブも盛り上がりすぎて、だいたい警察がきていましたw
そんなですから夜な夜な集まるメンツも湘南界隈の感度の高いサーファーはもちろん、東京のサーファー、お洒落さんも多く、刺激的な出会いの多い場所となりました。その当時は歩いても帰られるところに住んでいたので、かなり遊ばせてもらいました。そんなパーティで知り合った方とビジネスがはじまるケースもあったりと、自分にとっては本当に楽しくも有益な場所でした。それも石田さんの繋げてくれた縁です。
サーフィン、アート、音楽が融合したサーフショップって時代の一歩も二歩も先を行っていたと思います。
ウチの家内がヨガの先生になった頃にはヨガにも興味を持ってくれ、カリフォルニアの2階を改装してヨガスタジオを作ってくれました。それもサーフィンとヨガの提案のはしりだったのではないでしょうか。とにかく最先端です。。

 

最近のKUMANO FIN SYSTEMとかサーフボードの配送用の段ボールの開発とかいろいろいろいろあります。もっともっといろんな影響があったかもしれませんが、思いつくまま書ける内容を書いてみました。先にやったから何でも偉いと言うつもりは全くありませんし、先人を常にリスペクトするつもりもありません(体育会的な先輩後輩関係などむしろ大嫌いです!)が、やってきた内容が(と人柄も!)素晴らしかったということです。それは亡くなったあとに世界の有名サーファー、アーティストなどがインスタグラム等でアップしていたことを見ればいかに偉大でみなに愛されていたかがわかるかと思います。
本当はサーフィンの雑誌で追悼特集を組んでもよいような内容だと思うのですが、サーフィンのメディアではやらないと思うので、とにかく書き記さなければと思い書きました。内容が違う!とかあればぜひ教えてください。

 

自分の個人的な石田さんとの思い出も強烈なものが多いので、少しだけ書いておきます。世界中の凄い人とのネットワークがある方だったので石田さんに紹介してもらう人が強烈なのです。
自分が初めてカリフォルニアに行ったのは2000年くらいだと思いますが、前出のTさんに連れていってもらったカリフォルニア2日目、石田さんと合流し、「波が小さいからロングボードを借りに行ってロングボードをしましょう」ということになりました。それでいきなりジョエルの家に行き、ジョエルにロングボードを借りてカーディフへ行くというジョエルファンの自分にとっては緊張しすぎて何も話せなかったほどでした。その後に初めてのカーディフでまだ慣れていなかったロングボード(しかもBOSSの10フィート!)で当然ノーリーシュというドキドキのサーフィンをしたのがカリフォルニアの最初の印象という・・・。強烈でした。

その何年もあとですが、石田さんがDANA POINTに住むようになってからサンオノフレに連れていってもらった時には、晩年のBob Marleyの写真を撮っていたナイジェル・スコットさんと一緒にサーフィンする機会もありました。ナイジェルさんはそのころコナン・ヘイズの家に居候してるとかで「コナンの家から一番長いサーフボードを持ってきた~」とクリステンソンのグライダーを持ってきたので、それをお借りしたりとなんか話がすごいことになっていくのです。ともかく自分がサンオノフレに入った中でもかなりサイズがあり、最高に楽しかったのを覚えています。

最後に一緒にサーフィンしたのは昨年夏のカリフォルニアの石田さんの自宅からほど近いDANA POINTでした。南ウネリがヒットしてサイズのある波を一緒にできたのは最高でした。2017年で最長の波に乗れました。お借りしたボードもジョエルのパーソナルボードとかタイラー・ウォーレンのパーソナルボードとかすごいのばかりだし、セットはオーバーヘッドはあるし、当然リーシュカップすらないしでやはりドキドキしながらやったのですが。
tyler warren
その時石田さんが乗っていたのはこのタイラー・ウォーレンシェイプのグライダーでした。これはTATSUO TAKEI監督のWET DREAMでタイラーがシェイプしていたものだそうです。

 

思い出もつきないのですが、とにかく今は感謝の気持ちでいっぱいです。生前もなるべく感謝をストレートに伝えようとことあるごとに伝えて来たつもりでいたのですが、今こうして振り返るとやはり感謝しきれなかった思いでいっぱいです。
今の店をはじめるときも、「石田さんのおかげでこうしてサーフィンで仕事ができます。」と言えば「ヨッシーのおかげです。いつもありがとうございます。」と逆に感謝されてしまうことばかりでした。そんな方でした。怒るとめちゃめちゃ怖くて、いろいろくらって大変だった方も多かったかもしれませんがw。それでも引き寄せられてしまう魅力的な人でした。

 

自分がサーフィンのカルチャーに詳しいと言われたり、雑誌にコラムを書かせてもらったりとかしているのは、この20年でサーフィンが劇的に変化していくのを石田さんのおかげで一番間近で見させてもらえたのがベースになっています。石田さんと引き合わせてくれたT先輩にもあらためて感謝です。このベースがあるから、時に生意気なことも言わせてもらっています。今のオルタネイティブなサーフシーンは全てここから始まっていたといっても過言ではありません。その石田さんとジョエルがやってきたことへのリスペクトなしに今のオルタネイティブなサーフィンを語るのは無しですよ。メディアの皆さま、サーフィン業界の皆さま、そこはよろしくお願いします。

 

昨年くらいからまた仕事での関わりも多くなってきたので、2018年の作戦もいろいろ話していたので、こんな急なことになったのは本当に残念でなりません。またこのような内容を多くの人に伝えるべくブログでも書いておこうと常々考えていたのですがこんな後追いになってしまった自分も情けないです。。。
といって後ろを向いていると石田さんに怒られそうなので、自分は石田さんにもらったたくさんのことを、なるべく多くの人にサーフィンを楽しくてカッコよくてハッピーなものとしてに楽しんでもらうように伝えていきたいと思っています。
石田さんがSEEDLING(種まき)してくれたものを育てていきたいと思います。

 

REST IN PARADISE & SURF IN PARADISE 石田さん 本当にありがとうございました。天国でも良い波乗ってくださいね。

michiaki ishida going left
photo:Buntaro Kato http://www.buntarokato.net/


 
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